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■変容と回帰 コロナ禍と文化

 演劇もダンスも、他者と密着することなくして成立しない芸術だ。コロナ禍で、多くの俳優やダンサーが舞台に立つ機会を失った。一方で、接触による感染リスクの低い朗読劇が盛んになった。

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 劇作家・演出家の上田久美子が2022年、独立して初めて脚本を手がけたのも朗読劇だった。タイトルは「バイオーム」。動植物の生態系群を指す言葉である。

 その年、16年間在籍した宝塚歌劇団を退団していた。宝塚で描いてきたのはロマンスをふんだんにまぶした人間ドラマ。その反動もあってか、「人間にとらわれない世界を描いてみたくなった」。

 後で考えると、自身がPCR検査で陽性になり、ホテルで2週間の隔離生活を送ったこともきっかけだったような気がする。最初は不自由しか感じなかった。しかし、隔離が終わる頃には心が平穏になっていた。「今日は何をしたらいいか考えなくていいところに自由を感じたんです」

 私自身が知らず知らずのうち…

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